セミ

セミが鳴き始め、夏に彩りを与える。
それにしてもセミは律儀なものだ。早出もせず遅刻もせずきっちり夏に出てきて、朝から鳴き出し、定時で鳴きやむ。たまに真夜中に、ジジッ…ジジッ…と聞こえる断末魔のようなセミの声は妙に物悲しい。長い間暗い土の中で耐え忍び、ようやく外に出てきて夏を告げる。実に自己犠牲的なビジネスモデルだ。これは流行らない。
あんな地震があったが、にも関わらず、春は桜が咲き、花粉が飛び、夏はセミが鳴く。その当たり前が、なんと嬉しいことか。