あれから半年(嫁版)

homecomputer本人による追記
登場人物紹介です。ほとんど嫁さんの部署の関係者なのに僕が紹介していいのかなあ。

私:homecomputerの奥様。電気系の開発部所属。
部長:開発部の上司。変わり者。だが孫はいるらしい。最近ゲーマーであることが発覚。
副部長:開発部の上司。前日まで福島に出張に行ってた。部長よりマトモな人らしいが、女性にトラウマがあるらしく未婚。
係長:嫁さんの上司にして大学の先輩。四国出身。冷静な性格。うどんが好物。
後輩:嫁さんの後輩。だが嫁さん(と僕)と同い年。それどころか誕生月は嫁さん(と僕)よりも先。
分室の人:元は嫁さんと同じ部署にいたが(当時は係長。現在課長)今は異動した。嫁さん(と僕)の近所に住んでいる。
事務の女性:既婚。開発部の事務を担当している。年齢不詳の美人。
人事副部長:嫁さんと僕共々お世話になってる。いつもにこやかでとてもいい人。
顧問のおじいちゃん:嫁さんの後ろの席では顧問のおじいちゃんが何人か固まっている。
社長:地震当日はヨーロッパに出張中だったらしい。先見の明がある。
若:社長の息子。パニックの社内を社長不在の間まとめていた。


それではどうぞ。


ども、嫁です。
3.11、その日は午後からお客さんを迎えて会議が開かれることになっていた・・・30人くらい参加する、大きな会議。主催部門はうちの部署。分室(隣の駅にある、開発部門の一部が存在)からも参加者が5名ほど来た。
そんな会議の休憩時間、メールチェック等のために皆会議室を出て、うちの部署全員がデスクのところに戻った途端、地震発生。「ぎゃーっ!!」と机の下に隠れる私。(私が住んでいた岡山より明らかに地震が多そうな)東京に50年は在住していそうなのに「こんなの初めてだ」とびびる副部長。冷静に棚が倒れないように手でおさえる係長(だが彼は四国出身である)。
揺れがおさまった後、インターネットで情報収集(東京は停電しなかった)していた顧問のおじいちゃんが、どうやら数日前に地震が発生した東北沖が震源らしいという情報を伝える。それまで私が「この前の震源ですかね」と言ったら「こんなに揺れてるから、震源はもっと近いはず、千葉県沖じゃないか」と言っていたマイペース部長も一瞬狼狽える。
西日本人なので、思い出すのは阪神大震災。あのとき岡山は兵庫の隣なのに震度4だった・・・だから、東北震源でこれだけ揺れたなら震源近くは7、マグニチュードは8以上だと覚悟。
「千葉で震度6」という情報を聞き(のちに千葉北部の一部であることを確認した)、夫の実家は千葉なのでやばいんじゃないかと慌てて工場に電話をかけるも、つながらない。停電しているという情報は、この時点で入っていなかった。しかし残酷なことに「会議休憩時間終わりだから戻るぞ」とマイペース部長。情報が欲しいのに会議室に戻される。まじふざけんな
会議室に戻って「怖かったねー」と話す一同。余震のたびに会議室にかかっている絵が揺れて落ちそうなので取り外す。会社傍の防災無線が非常事態を知らせている。もはや会議どころじゃない。するとそこに人事副部長が現れ、「避難のため本日の業務終了です」と告げる。慌てて着替えて帰る支度をする。(お客さんは営業の人が車で送ったらしい。)帰る前に会社の電話を借りて岡山に電話、無事を伝える。
一度は会社から外に出されるも、電車は動いていない、タクシーもつかまらない。区役所に行ってみると、集まった人たちがテレビを見ていた。気仙沼が火の海になっているようだ。阪神淡路の時もこうだったなと思って見ていたら、いきなりアナログ放送が「停波します」のテロップと共に消えた!マジやばいんじゃね?と青ざめる。すぐに復旧しましたが。
その後、帰宅手段がないのと会社ビルの安全が確認されたということで(2010年夏に耐震工事をやっていたのだ。社長GJ!)若が区役所に迎えに来る(「若」というのは前述の社長の息子である)。社長出張中のため、彼が非常事態対策にあたっているようだ。会社に戻ると、会社の窓から見える東京タワーの先端アンテナが曲がっていた。停波はこのせいだったのか?
ここで一休み、携帯をパソコンのUSBから充電。この充電器はチップワンストップという電子部品の通販サイトに新規登録したら貰った物で、特に持って帰る理由もないので会社に放置していたのだ。なんでも持っておくものだ。ちなみにこの充電器は、携帯充電器を探していた若に貸した。チップワンストップと書いてあったので、電力泥棒の誤解は受けなかったと思う。
しばらくして弟から電話がかかってくる。携帯電話やメールはつながりにくいが、岡山からの電話はつながるようだ。岡山に居た時はほとんど会話もしなかったのに、泣けることをするじゃないか。夫からのメールはこのあたりでまとめて届いた。やはりつながりにくく、リアルタイムでは届かなかったようだ。歩いて帰宅しようとしていることを初めて知った。
時間はもう夕方。開発部は野郎ばっかりなので、会社に泊まるのはあんまりよくないんじゃないのかなあーと思う私。地図を印刷し、脱出を試みる。前述の人事の人がやってきて、炊き出しをしているからどうぞとのこと。おにぎり1個とお茶を貰う。うちの会社に非常時備蓄食料があったということを初めて知った。水筒にお茶を貰い、栄養を蓄え、脱出に備える。
部署の後輩(後輩だが同い年の男性)が隣の駅だということを知っていたので巻き込む。そしてラッキーなことに、前述の会議で分室からやってきていた人の中に近所の人が居たのだ!そして3人で歩いて帰ることを決定。
歩いて帰ることを告げると、「道中食べてください」と事務の女性から(のちに彼女は夫が車で迎えに来たそうだ)土産物のクッキーを貰う。実は、副部長が前日まで東北に出張していたのだが、前述の会議に参加するために戻ってきていたのだ。クッキー、そして甘いもの好きの私が常備している飴。これで夕飯が食べられなくとも、しのげそうである。
そして3人、川崎に向けて出発!とことこ歩き、五反田で小休止。やよい軒を発見し、食事とトイレをすませる。ここで夫も地元のやよい軒に行っていることが判明。冷やかされた。しばらくして夫と電話が繋がり、川崎は停電しているかと尋ねると「NO」の答え。横で聞いていた同行人二人はガッツポーズをしていた。最後の方はランナーズ・ハイになってしまい、多摩川にかかる橋を渡る頃に見える川崎の夜景にテンションが上がり、携帯で撮影を始める始末。
そして帰宅し、夫と再会した。

あの会議は何気に人を救ったんじゃないかと思うのだ。