第459号 誘拐者…の巻き 42コマ〜45コマ 全コマ解説

42コマ…「おっッ」と発音が難しい感嘆詞を上げ、後ろを振り返るポート。後方から、「ゴオオオオ」という轟音が近づいてくる。

43コマ…ポートが振り返った目鼻の先には、先ほど爆発した手榴弾による炎と爆風が迫っている。

44コマ…ここで実に前衛的なコマが現れる。コマ全体が黒くベタ塗りされ、そこに文字なのかなんなのか、おそらく修正液で塗られた呪詛のような何かが白く書かれている。

45コマ…突然トトロがカメラ目線で、「はいあて先107-8066×2 TBSレディオ第459号44コマ目のセリフを答えない係まで〜」「VOWネタありましたよ〜」と言う。
一体作者が何をしたかったのかおよそ理解できないが、おそらく作者は、44コマで、爆風に追われる身となったポートが自らの身の不幸を嘆き、そのやるせなさを表すために黒地に白文字という無駄に凝った舞台を用意してその心境をつづるつもりだったのだと思われる。だがここで大誤算が起きる。白い文字を書ける道具がないのだ。仕方なく、その辺にあった修正液を使ったと思われるが、見事に失敗。コマの小ささに対し修正液では太すぎた。
何が書いてあるかさっぱりわからず、ホラーチックなコマになってしまった。だが作者は、苦肉の策を編み出した。というわけで、文字が読みにくいことを逆手にとって、トトロに無理やりクイズの解答募集を告知するラジオパーソナリティー役をやらせたのだ。なぜラジオかというと、当時作者はラジオっ子であっただけであり、マンガとは何も関係がない。郵便番号のあとの×2というのは、パーソナリティーがよく郵便番号を繰り返す様子を表しているらしい。
また、VOWネタありましたという発言がさらに意味不明さに輪をかけているが、これは、当時の作者が好んで読んでいた『VOW』という、身の回りの変なものを集めた本で、ある学校のテスト問題で、問題文に「次の問いに答えな*1い」と書かれていたものがネタとして投稿されており、先の応募先が「答えない」となっていることを受けてのトトロの発言なのだと思われる。
だが全体的にこのコマはまるで評価に値しない。修正液の失敗の件を適当な調子でごまかし、VOWという細かすぎて逆に笑えないネタを持ってきて、しかも自然発生こそ正義であるVOWネタを自分で書いてしまうという、完全にマンガをなめきった行為である。趣味でなかったら許されない。失敗をなんとか笑いに持っていこうとする諦めの悪さだけしか評価できない。

*1:「さ」が抜けている