アクションシーンにもストーリーがある

ふと、ついこないだ見た『トランスフォーマー』の最新作を思い出してみるが、どんな映画だったかほとんど思い出せない。大きなロボットが動きまわっててすごかったとか、そんな、夏休みのキャンプに行った幼稚園児のインタビューみたいな感想しか出てこないんだが、それも致し方あるまい。なぜなら、アクションにストーリーがないからだ(キリッ
と無理やり本題に突入させる。映画でも何でも、優れたアクションシーンというのは、そこでアクションを起こす意味があるシーンだと思う。
たとえば、『マトリックス』で僕がとても好きなシーンがある。文字に起こすとややこしいけど、ちょっと頑張ってみる。


・まず、ビルに監禁されたモーフィアスを救出するためにネオとトリニティがヘリコプターに乗る。
・ネオがヘリコプターに固定されてるロープを体に巻きつけ、ヘリから飛び出し、モーフィアスを空中キャッチ。
・敵がヘリに銃撃し、燃料タンクに穴が開く。墜落の危機。
・とりあえず近くのビルの屋上にモーフィアスを落とす。ネオも飛び降りる。
・トリニティはまだヘリの中。ヘリもろとも落ちようとしている。
・ネオはヘリから伸びているロープを(ヘリと運命を共にする危険もいとわずに)再び体に巻きつける。ヘリに体を引っ張られビルの縁がどんどん迫る。(でもトリニティならこのロープをつかむはずだ。)
・ヘリの中のトリニティは、(反対側をネオが巻きつけているであろう)ロープを(ネオが支えていると信頼して)つかみ、銃でヘリから切り離す。
・ヘリはビルに衝突し大破。トリニティは、ネオが上で支えているロープをつかんでヘリから脱出成功。


僕がすごいと思うのは、このシークエンスの間にセリフらしいセリフがほとんどないのに、ネオとトリニティがどんなことを考えているのかがアクションだけでわかるということだ。僕がカッコで補った部分は想像でしかないが、無言のうちにネオとトリニティの間に信頼関係が確立しているのがわかると思う。
この一連のアクションを無理なく思い出せるのはそれぞれのアクションに意味があるからであり、無駄がないからだ。物語は何もセリフだけで進行するものではない。アクションでも明確にメッセージを伝えられる作品こそ名作たりうるのだと思う。