第459号 誘拐者…の巻き 25コマ〜29コマ 全コマ解説

25コマ…穴に押し込んだポートに「入ったか?」と言いながら、操作盤のような小さな扉を「チャ…」と開けるトトロ。
26コマ…操作盤の中にあったレバーを、勢いよく「ガチョン!」と下げるトトロらしき者の手。
27コマ…すると、ポートの押しこまれた穴の扉が「プシュ」という音とともに閉まり、ポートは穴の扉の向こうで「おや?」と悠長な声を出している。コワモテの部下2人は「しょ、所長?」とトトロを怪訝な面持ちで顧みるが、トトロはまあまあといった様子で部下に無言で手を振り、まったく意に介していない。
28コマ…続いて、「(ピ)」と、小さなスイッチを押すトトロの者らしき指。作者自身の指を模写しているので、爪の端の半月状の模様までも無駄に細かく描かれている。スイッチを押す音がなぜカッコつきなのかというと、よく漫画の中でスイッチを押す場面で、音が出る出ないにかかわらず何かにつけて「ピッ」という音でひとくくりに描写されることが多いが、このスイッチは断じて音は出していないが(スイッチは押したとき音が出ることのほうがむしろ少ないというのが当時の作者の見解である)、押したということを強調するために便宜上カッコをつけて「無の音」を出しているのである。作者の偏執質的こだわりの現れと言えよう。
29コマ…トトロがスイッチを押した次の瞬間、穴の扉の向こうで「ゴオオオオ…」という風のような音が発生し、同時にポートが「うっひゃああぁぁ…」と言い、声が小さくなっていく。ドップラー効果が発生したのだ。穴の向こうで何が起きたか定かではないが、トトロが押したスイッチは穴の内部に強風を送りこむ装置で、ポートは狭い穴の中で発生した強風になすすべもなく吹き飛ばされたのだと推測される。