セピア色

ある航空事故の現場に赴いた消防士の、「あの事故を思い出すとオレンジ掛かっている。人間は衝撃的な場面に遭遇するとショックを和らげるために本能的に記憶の色彩を抑える」という言葉が印象的だった。
今回のマレーシア機撃墜事件の現場映像は悲惨そのもので、僕がメーデー!でよく見るような映像と同じ様相を呈していた。テレビで公開できるような映像は、現場にあたる方々が見るようなオレンジ掛かるそれではなく、いくぶん薄まった映像であるとは思うが、それでも異様な光景には違いない。
そのせいか、僕は事故の映像はセピア掛かって見える。昭和の、想像に頼るしかない事故や事件は、どれもセピア掛かっている。*1
大韓航空機撃墜事件のとき僕は生まれてなかったが、聞く話ではセンセーショナルで、異様で、御多聞に漏れずセピア色に感じるが、それは単に出来事が古いからそのように変換されているのだと思っていた。しかしそれからおよそ30年、テクノロジーが大きく発達した現代になっても、やはり変わらず今回のマレーシア機撃墜事件の映像もセピア色に映った。
30年も前は、今に比べると航空事故や事件が多く、それだけ多くの人命が失われた。今にして思うと、あの時代だったから起きたことだと振り返ってしまう。
だが今回の事件は昔と何ら変わらなかった。どんなに航空技術が発達しても、墜ちるときは墜ち、人はいつの時代も同じく死ぬ。
昔は、ずいぶん簡単に人が死ぬものだと感じる。今よりも命の価値が安かったのかとすら感じる。だがやはり現代でもこのような撃墜事件が起きてしまうとは、衝撃を隠せない。

*1:2011年1月6日の日記参照