考えても無駄なこと

「それで盗難に罹ったのは何時頃ですか」と巡査は無理な事を聞く。時間が分る位なら何にも盗まれる必要はないのである。それに気が付かぬ主人夫婦はしきりにこの質問に対して相談している。
「何時頃かな」
「そうですね」と細君は考える。考えれば分ると思っているらしい。
───『吾輩は猫である』より

ふと思ったのだが、本当に賢い人というのは、自分の頭で考えたって無駄なことはすっぱりと捨ててしまえる人じゃないかと思う。僕はなんでもかんでも考えようとして、面倒くさくなって逆に思考が停止してしまいがちだ。その点、賢い人は、さっさと他の手段を考えるか、人に聞くか、うまいこと他に投げてしまう。
僕は自分を買いかぶりすぎなんだね。自分は何でもできるという愚かしい思い込みがあって、なんでもはいはい聞いてしまう。それで結局あっぷあっぷになってしまう。できることだってあるだろう。だがそれはたまたまなんの邪魔も入らなかったからであって、何か横やりを入れられたらそこで詰みだ。僕は、何も障害なく順調にいくという根拠のない自信にとらわれている。
つまり本当に賢い人というのは、
「絶対仕事では邪魔が入るもの。入らなかったら儲けもん」という見通しと覚悟があり、
「自分はなんでもかんでも知ってるわけじゃない。わからなきゃわからないと言う」という謙虚さと潔さがある人なんだ。
僕は頭が変に凝り固まってプライドの塊だから、そこを解きほぐさないといかんなあと思う。